ASKA「笑って歩こうよ」発売前の私の考察

ASKA

先日、2021年6月23日に、ASKA初の配信ライブが行われた。
抽選で当たったファンクラブ40名と、Terminal Melodyの招待枠5組10名を含めた計50名が、特別にライブ会場で生で見ることができ、配信チケットを購入した我々は、そのライブから時間差を設けられ、収録した映像をその日の21時半から見る形となった。

トラブルを防ぐための音の調整時間ということだから仕方ない。

それでもそんなことは気にならず、楽しむことができた。

そのライブの前半と後半の間に、今回はラジオ番組「Terminal Melody」の公開収録もあった。
リスナーの質問にASKAが答え、7月に発売される新曲「笑って歩こうよ」も、予定にはなかったようだが、ASKAの思い付きで1番だけ流された。
そのおかげで一足早く、新曲を聞くことができたのだが、私はとても気に入った。

それから迎えた日曜日、Terminal Melodyでは、その時の一部が流された。
そして、「笑って歩こうよ」のフルコーラスがようやく聞けたのだ。
そして第一印象で気に入ってた私だが、2回目以降、聞くたびに好きになっていく曲となった。

聞くたびに好きになる、というのは、ASKAの曲の大きな特徴の1つでもある。
それを堪能しながら、私なりに感じたことを書いていこうと思う。

ただし、まだ発売前で、正式な歌詞を見たわけではないので、耳で聞いた歌詞との多少の誤差は了承いただきたい。

 

昭和のメロディーに令和の服を着せた

ASKA本人も述べていたことだが、昭和の時代の音楽には、ステキなメロディーが数多く存在する。
私も幼少の頃から、常に音楽を耳にしていたので、当時テレビやラジオで流れていたような曲は今でも覚えているものが多い。
ただ、環境のせいか、当時のマイナー調の歌はあまり好きではなかった。
父親に支配された環境で、言いたいことも言えず、かといって自分でどうすることもできない状況で、なすがままに生きていた私は、テレビやラジオから流れてくる音楽を聞きながら、なぜこんなに悲しげな暗い曲調ばかりなんだろうと思っていた。
そしてそれを人々が良い曲と言って何度も聞いている。
あの時の私にはそれが不思議でならなかった。

そんな前提で、実は安全地帯の「恋の予感」も好きではない曲の1つだった。
だが、この「笑って歩こうよ」の冒頭部分は、その「恋の予感」を思わせるようなメロディー。
なのにも関わらず、私はまったく嫌な感じはしなかったし、むしろ『好き』と思えたのだ。
私の中ではASKAマジックなのである。
なぜかASKAの作るマイナー調の曲は、嫌いになれないのだ。

なので昭和のメロディーに今の楽器で服を着せるとどうなるか、とASKA本人は言っていたが、私にはASKAの服を着せるとどうなるか、の結果がこの曲なんだと思っている。

笑って歩こうよのニュアンス

笑って歩こうよ、といえば、前向きな言葉には間違いないだろう。
だが、その言葉の細かいニュアンスをASKAはコードで繊細に表していると私は感じた。

というのも、タイトルでもある「笑って歩こうよ」は、サビの最後に出てくるのだが、素人のつたない耳コピで分析すると、Bm→Dm6→DM7となっていて、「よ」の部分のDM7がポイントとなってくる。
普通の流れでいくと、「よ」の部分はF#mのマイナーコードにおさまりがちだが、そうじゃなく、DM7のメジャーコードに展開しているところがASKAらしい。
それによって、「笑って歩こうよ」のニュアンスが伝わってくるのだ。
マイナーコードのF#mで終わると、極端に言うと、つべこべ言わずに笑って歩こう!と、半ば強制的にも聞こえてしまいそうなものを、DM7で終わることによって、自分の弱さ切なさを認めながらも、お互い、笑って歩こうよ、と提案しているような、ASKAの優しさが伝わるようなニュアンスに聞こえてくるのだ。

こういう分析をすると、ああさすがプロだなと感心する。
この曲に限らず、こういったプロの技が使われている曲はきっとたくさんあって、我々素人はそれを当たり前に良い曲として耳に入れているんだなと、Fellowsであることの幸せを実感せざるを得ない。

「都会の空」に通じる心の揺さぶり

ASKAが曲作りにおいて、人の心に心地よく響くコードとメロディーの組み合わせを意識しているといったような内容のことを話していた記憶がある。
それを聞いた時、「だからか!」と妙に納得したのを覚えている。

私が初めて聞いたASKAのアルバムは、「SCENEⅡ」。
姉が買って聞いていたのを横で聞いていて気に入って、それからは姉よりも聞いたんじゃないかと思う。
その中でも特に気に入っていたのは「けれど空は青」と「都会の空」だ。
当時中学生だった私は、まだASKAの詩の内容を理解できるほどの人間ではなかったので、気に入っていたのはメロディーだ。
メロディーと言っても、もちろんコードありきのメロディー。

「けれど空は青」では、サビの部分と、ミドルエイトからサビに向かう部分の最高に盛り上がるところ。
胸がぎゅーっとなり、涙が出てくる。
涙が出るということは、感動したということだ。
感動したということは、心が動かされたということだ。

「都会の空」では、やはりサビの部分。
都会の空を見上げれば~の下から駆け上がるようなメロディーと、コード進行と、編曲のすべてが1つの波になって私の心にぐわっーっと押し寄せる。
そして涙が出る。
当時、歌を聞いて泣いたのが初めてだったので、これはなんなんだ?と驚きと感動でいっぱいだったが、今になればこれもすべてASKAの織り成す技なんだということを知ることになる。

これと似た心の揺さぶりを、「笑って歩こうよ」にも感じてしまった。
いつだって~の部分が、下から駆け上がるメロディーで、「都会の空」とコード進行も似ている。
きっとこの下から駆け上がるメロディーと、このコード進行が、人の心を大きく揺さぶるカギなのであろう。
そしてそれをASKAは知っている。

私は今回分析してみて初めて気が付いた。
こうして知らないうちに、我々の心はASKAマジックで揺さぶられるのだ。

青いシャツを着た雨のメッセージの謎

この曲を初めて聞いた時、普通に男女の切ない恋か愛の歌だろうと思った。
だが、何度も聞いているうちに、私はそうじゃないということに気づいた。

まず、『いつだって僕たちは白い蝶々の羽のカーテンで寂しさも切なさもまるくなるように』の部分が分からない。
そこと『青いシャツを着た雨のメッセージ』の部分も謎だった。
でも、私は「雨のメッセージ」の部分でピントきた。
そう、Chageのアルバム「Boot up!」に収録されている「君に逢いたいだけ」の冒頭部分の歌詞が、「雨がなかなかやまない」なのだ。

当初、この「君に逢いたいだけ」を聞いた時も、ああ、昔の仲間に逢いたいってことかと単純に思っていたが、何度も聞くうちに、いや、それもそうかもしれないが、「君」ってASKAのことなんじゃないかって思えてきたのだ。
「君」をASKAとして読んでみると、すべてがしっくりくる。
「雨がなかなかやまない」のも、Chageの中ではASKAとの問題はまだ雨の中なのだ。
「僕らは思ってた また描き直せばいいと」の部分も、また二人でやり直せばいいと思っていたのだろう、ふたりとも。
でもそんな簡単なことじゃなかったから、雨がなかなかやまないのだ。
そして「古びた弦を変えよう ついでに明日も変えよう」の部分でChageの心境が伺える。
古い考えや何か(仲間なのか、やり方なのか)を変えて、自分なりに明日を変えていこうと思っているんだと思う。

そして何より「君」=ASKAに逢いたいだけなのだ。
昔一緒に音楽をやった仲間たちとなら、会おうと思えば会えるはず。
でも、ASKAとだけは、色々な大人の事情なのか、会えないのだろう。
そんなASKAと、色んな問題は抜きにして、今はただ、昔からの仲間として、チャゲアスをやってきた同志として、ただ、ただ、逢いたいだけなのだと、私は受け取った。

でもChageも本音を言う人間じゃないというのはASKAから聞いていることだ。
例え、歌詞の内容がASKAに向けたものだとしても、本人は言わないだろうし、認めないだろう。
それをASKAは分かっていて、この歌を、自分に対するメッセージだと受け取った。
でも、青いシャツを着ているのである。
つまり、昔の仲間に向けたメッセージだとカモフラージュしているということだ。
それをASKAは、「青いシャツを着た雨のメッセージ」と表現したのではないかと、私は思った。

そう考えると、実はこの曲は、Chageに対するメッセージソングなのだと言える。

ASKAもまた、カモフラージュさせているのかもしれない。

「僕はすぐに君はすぐに 心悲しくなっちゃう」
お互い、間に別の人間が入り込んだり、周りから色々言われたり、それぞれが犯した罪のことを考えたりすると、心がすぐ悲しくなってしまう。
足元が危なくても、悪い噂をされても、ふたりの愛(絆)をかじりながら(傷つけ合いながらも)、遠くから差し込んでくる朝日(いつか二人で気軽に会うことができて、もしかしたら並んでステージに立つことができること)を肩先で感じて、一緒にお互い好きなことをしながら、笑って歩こうよ、と私なりに解釈できた。

まとめ

この「笑って歩こうよ」は、Chageの「君に逢いたいだけ」に対するアンサーソングのようなもので、きっと二人だけに分かること、通じることがあるんだと思う。
歌の解釈は、人それぞれ。
これは、あくまで私個人の分析、考察によるものだということは忘れないでいただきたい。
そして時が経てばまた、違う解釈ができるかもしれない。
それも含めて、この先もずっと聞き続けていきたい。

そんな私にとって、この「笑って歩こうよ」は、ASKAの名曲の中のベスト10に入ることになるだろう。

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